薄毛治療
2017.08.10更新
植毛とは?自毛植毛と人工毛植毛の違い
このページでは、植毛手術の中でも特に人工毛植毛について解説します。
人工的に作り出した髪の毛を移植するのが「人工毛植毛」
人工毛植毛はポリエステルやナイロンといった合成繊維で作られた人工毛を頭皮に移植する植毛手術です。
現在では危険性が高いことから人口毛の植毛を禁止している国も多くありますが、日本ではまだ禁止されていないため、植毛手術の選択肢のひとつとして選ばれることがあります。
ただ人口毛植毛が今なお活発に行われているのかというとそういうわけではなく、皮膚科の医師が薄毛治療についてまとめた日本皮膚科学会の「男性型脱毛症診療ガイドライン」でも人工毛植毛の推奨度は5段階評価で一番下であり、「人工毛植毛手術をすること自体は違法じゃないけど、危険だからやらないほうがいい治療法」というスタンスになっています。
人工毛植毛術の有益性に関しては、利益が危険性を上回る根拠は乏しい。
さらに、エビデンス・レベルとしては高くなくても、有害事象に関しては看過できないものがある。それゆえ、現時点では日常診療において使用しないよう勧告する。
人工毛植毛と自毛植毛の違い
植毛手術には人工的に作った毛を使う人工毛手術の他にも自分の毛を使う「自毛植毛」という方法があります。
自毛植毛は人工毛植毛に比べて安全性が高く、先ほどの「男性型脱毛症診療ガイドライン」によるランクづけでも「行うよう勧められる」とされています。
いったい自毛植毛と人工毛植毛にはどういった違いがあるのか。特に重要なポイントを押さえておきましょう
なお、自毛植毛については「自毛植毛の情報総まとめ」の記事で解説していますので詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
人工毛植毛は拒否反応が起きやすいが、自毛植毛は拒否反応がほとんど起きない
自毛植毛で移植される毛はもともと自分の毛ですから、移植した後に拒否反応が起こることはほぼありません。
定着率(毛根がしっかりと根付く割合)は90%以上で、移植した毛はほとんどすべてがしっかりと根付きます
一方で、人工毛手術で移植される毛は自分の髪の毛ではありませんし、そもそも本物の髪の毛ですらありません。
その結果、移植された人工毛に拒否反応が起きて、最終的には移植した人工毛がすべて抜け落ちてしまうのです。
人工毛植毛は拒否反応が起こるが、自毛植毛なら起きにくいと、安全性面での差は大きく出ています。
人工毛は成長しないが、自毛は成長して生え変わるようになる
人工毛植毛で移植した人工毛は伸ばすことができませんし、抜けたらそれっきりです。
たとえるなら髪の毛に見えるだけの黒い糸を埋めているだけですから、手術後に長さを伸ばしたり生えかわらせたりするというのは不可能なわけです。
しかし、自毛植毛は髪の毛を生やす部分である毛根を移植していますから、移植さえ成功すればあとはその毛根からどんどん髪の毛が伸びてきます。
また、毛根ごと移植しているので抜けてしまっても再び生えてくるのです。
自毛植毛は毛が生えてくるようになる手術ですが、人工毛植毛はただ毛を植えるだけの手術なのです。
自毛植毛は毛が生えてくるまで待たなければならないが、人工毛植毛は手術直後から生えた状態になる
自毛植毛は毛を移植するというよりは毛根を移植する手術です。
そのため、自毛植毛手術が成功しても実際に髪の毛が伸びてくるのを8ヶ月から10ヶ月は待たなければいけません。
一方で人工毛植毛は文字どおり毛を移植しますから、手術が成功した時点で薄毛を目立たなくすることができます。
たとえるならタネを植えて作物が育つのを待つのが自毛植毛、造花を買ってきて花瓶に挿すのが人工毛植毛なのです。
人工毛手術のデメリット
「利益が危険性を上回る根拠が乏しい」と言われているだけあって、人工毛手術には多くのデメリットがあります。
どういったものがあるのかひとつひとつ見ていきましょう。
人工毛は異物なので拒絶反応による頭皮の炎症が起こりやすい
私たちの身体には「免疫」というシステムがあり、雑菌やウイルスといった本来は体内に存在すべきでない異物を排除しています。
そして人工毛も最初から体にあったものではないので免疫に攻撃されてしまうんですね。いわゆる「拒絶反応」が起こってしまうわけです。
ひどい拒絶反応が起こると頭皮の植毛部分が炎症を起こしたり、化膿して膿が出たりと頭皮環境が著しく悪化してしまいます。
異物を体外に排出しようとするはたらきによって毛はすぐに抜けてしまう
指にトゲが刺さったとき、奥深く入っちゃって取れなくなったな〜と思っても気付いたらトゲがなくなってることがありますよね。
人間には「身体に入り込んだ異物を体外へと排出する作用」があって、トゲを外に出そうとそれがはたらいたわけです。
これは人工毛でも同じことが言えます。
自分の意思で移植したといっても人工毛が身体的に異物であることには変わりありません。本人の意思とは関係なく、人体は異物である人工毛を体外に排出しようとします。
だいたい1年ほどで7割近くは異物排出効果で抜けてしまいます。実は人工毛はすごく抜けやすいのです。
長さの調整や本数の補充など、定期的なメンテナンスが必要
人工毛は周りの髪の毛と一緒に成長してはくれないので、少し髪が伸びるだけで背術部分に大きな違和感が出てきてしまいます。
そのため普通の人よりも頻繁に美容院(それも人工毛に対応しているところ)に行かなければなりません。
また抜けた人工毛が自然と生えてくることもないため、毛が足りなくなってきたら追加で手術を行う必要もあります。
つまり、人工毛植毛手術をすると、頻繁なヘアカットや植毛手術に追われるようになってしまうのです。
人工毛は劣化しやすい
人工毛は人毛に比べると劣化しやすく、紫外線やシャンプー・トリートメントに含まれる成分などによって徐々に色落ちしたり、手触りが悪くなったりしていきます。
その結果、人工毛植毛をした場所だけが色落ちしていて目立ってしまうといったことも起こりうるんですね。
弱りやすい人工毛に配慮したヘアケアが必要になってくるという点で、日常的なヘアケアに制限がかかってくるのは大きな問題です。
手術費用は保険が効かず高価
人工毛植毛は法的には医療ではなく美容の手術にあたるため、保険が適用されません。
人工毛植毛は一般的な本数である2000本の移植でおよそ50万円かかりますが、これが手術費用は全額自己負担となります。
さらに一度払えばそれでおしまいというわけではなく、先ほど少し触れたように1年で7割ほどが抜けてしまいますから、単純計算で1年半ごとに移植した2000本は全部抜けてしまい最初からやりなおしとなるわけです。
実際には少しずつ本数を足していったり、長さの調整を行なっていくわけですが、その際にかかってくるメンテナンス費用がだいたい年50万円ほどです。
合計の費用で考えると、人工毛植毛をするなら1年ごとに100万円が必要なのです。
人工毛植毛のメリット
人工植毛には多くのデメリットがあり、危険な手術でもあるためオススメはできません。
ただし人工毛植毛には人工毛植毛にしかないメリットもあります。
今からご紹介するメリットを見て「どうしても人工毛植毛がいいんだ」となった方はデメリットとの兼ね合いを考えた上で選択肢として考えて見てください。
どれだけ髪の毛が少ない人でも好きな本数の移植ができる
自らの毛根を移植する自毛植毛と違って、人工毛植毛は人工的に作った髪の毛を使って植毛します。
自毛植毛だと自分の毛を使うという都合上、移植できる毛根には限りがありますが、人工毛なら本数を気にせずに好きな本数を移植できるのです。
極端な例を挙げれば、スキンヘッドの人は採取する髪の毛がないので自毛植毛ができませんが、人工毛植毛ならそんなことは関係なしに手術することができます。
どんな薄毛の人でも望んだ本数が移植できるというのは自毛植毛にはないメリットです。
生えるのを待たなくていい人工毛植毛は手術直後から効果が実感できる
人工毛手術はすでに長く伸びている人工毛を移植しますから、手術直後から薄毛が目立たなくなる効果を実感できます。
自毛植毛は毛根だけを移植するせいで髪が伸びてくるまで数ヶ月待たねばなりませんから、薄毛を目立たなくすべき火急の用がある人にとっては人工毛植毛の「生えるのを待たなくていい」というメリットは嬉しいものとなります。
まとめ
人工毛植毛はメリットよりもデメリットの方が大きく、その危険性から薄毛治療としておすすめすることはできません。
実際にアメリカなどの外国では人工毛を植毛すること自体が危険な行為として禁じられているくらいです。
ですが、薄毛の面積が大きいけど大量に植毛をしたい場合など、人工毛植毛のメリットをどうしても享受したいのであればきちんとデメリット・危険性について把握した上で医師との相談のもと治療を行なってください。
また、現在もっとも主流なのは自毛植毛なので、よほどの理由がない限りは自毛植毛をおすすめします。