髪の毛の雑学
2017.05.18更新
亜鉛は薄毛・ハゲに効果あり?亜鉛と髪の毛の間にある本当の関係とは
「できるだけお金をかけずに、日常的な生活に組み込めるお手軽な薄毛対策はないか」 などと考えて検索すると、よく出てくる成分があります。
それは「亜鉛」です。
世の中には「亜鉛で薄毛対策」という情報が非常にたくさん存在しているわけですが、果たして本当に正しいのでしょうか?
正直な話、レバーを食べるだけで薄毛が治るのであれば、誰だって苦労はしませんね。
そこで今回はこの「亜鉛で薄毛対策」が真実なのかどうかを検証していきたいと思います。
亜鉛が髪の毛に必要な成分なのは本当
なぜ亜鉛が薄毛に良いなどと言われるようになったのか。
それには髪の毛に含まれている成分が大きく関わっています。
髪の毛はその大部分が「ケラチン」という名前のタンパク質で構成されているのですが、このケラチンを作るのには亜鉛が欠かせないのです。
つまり、亜鉛は髪の毛にとってなくてはならない成分であり、そういう意味では「亜鉛は髪の毛に良い成分」だと言えるでしょう。
しかしながらそれは亜鉛をたくさん摂取すれば髪の毛がより多く生えてくるという意味ではありません。
例えば私たち人間が生きていく上で水は欠かせない物質ですが、かといって人間が1日に50リットルとか水を飲んでも寿命が伸びたり、病期が治ったりなんかしませんよね?
水分が人間にとって必要不可欠な物質なのと、水分を摂取すると寿命が伸びたり病気が治ったりするのは別の話ということです。
それと同じで、髪の毛にとっていくら亜鉛が必要不可欠な物質だとしても、それを大量摂取することで薄毛が治るということはないのです。あくまで欠かしてはいけないということなんですね。
そもそも、亜鉛は毒物です。
確かに人間の身体にとって必要不可欠な物質ではありますが、人体に必要なのは平均でたったの9mg程度で、1日に100mgも摂取すると嘔吐や発熱といった健康被害が出るおそれがあります。
塩分などと同じで、いくら必要不可欠でも常識はずれなほど大量に摂取すれば死にもつながる物質ですので、亜鉛を大量に取るなどというのはもってのほかな行為なのです。
亜鉛が5α-リダクターゼを阻害して薄毛予防になるというのは嘘!
また、亜鉛が薄毛対策になる理由のひとつとして「5α-リダクターゼ」のはたらきを阻害するという点がよく挙げられています。
5α-リダクターゼとは「男性型脱毛症」の原因となっている酵素のひとつで、簡単に言えば薄毛を引き起こしている張本人です。
詳しくは「男性型脱毛症「若ハゲ」、AGAとは?」で解説しているのでこちらを参考にしてほしいください。
とにかく「亜鉛には薄毛の原因の5α-リダクターゼを押さえ込む効果がある」と、こう言われているわけなんです。
確かに、5α-リダクターゼのはたらきを阻害することができれば薄毛対策として機能します。それは数少ない発毛剤である「フィナステリド」と同じ効果を持つことになります。
しかし、残念ながらこの「亜鉛が5α-リダクターゼを阻害する」という話は嘘なのです。
厳密に言えば、「亜鉛を皮膚細胞に与えると5α-リダクターゼのはたらきが阻害されるという結果が出た」という実験はありました。
しかしながら、その実験では皮膚に人間の致死量レベルの亜鉛を与えた結果であり、そもそも5α-リダクターゼ以外の機能も停止していた(皮膚がまるごと死んだだけ)という考えのほうが濃厚なのです。
さらに言えば、仮に亜鉛が5α-リダクターゼのはたらきを阻害したとしても、薄毛対策には何の役にも立たないという結果が出ています。
そもそも5α-リダクターゼのはたらきが阻害されるとなぜ薄毛治療になるのかというと、5α-リダクターゼという物質が「DHT」という男性ホルモンを作るはたらきをしているからです。、このDHTもまた男性型脱毛症の原因となっている物質であり、5α-リダクターゼのはたらきを阻害することでDHTの生成量が減ることで薄毛の進行を抑えているというロジックなのです。
つまり、「男性型脱毛症にはDHTが必要→そのDHTを作っているのが5α-リダクターゼなのだから、5α-リダクターゼのはたらきが阻害できればDHTも作られず薄毛にならない」 という論理展開なわけです。
ですが、人体の仕組みはそう甘いものではありませんでした。
男性に亜鉛を摂取させ続ける実験をしたところ、血中のDHT量が増加したのです。
先ほども言ったようにDHTは男性型脱毛症の原因ですから、亜鉛を摂取してDHTが増えるのであれば薄毛対策などとは言えないでしょう。
よって、亜鉛が薄毛対策になるというのは完全なる嘘なのです。
亜鉛とどう付き合っていくべきなのか
亜鉛は髪の毛のみならず、人体にとって必要不可欠な物質です。しかしだからといって大量摂取すべき物質ではありません。
薄毛が治らない程度であればまだいいのですが、摂取しすぎると健康被害が起こるおそれすらあります。
あくまで「亜鉛が不足しないような食生活を心がける」程度に収めて、わざわざサプリメントなどで大量に亜鉛を取るようなことはやめましょう。
亜鉛は牛肉や豚肉といった肉類や、魚介類全般に多く含まれているため、そういった肉食系の食事を定期的に取ることで必要な分の亜鉛が補給できます。
まとめ
亜鉛が薄毛対策になるというのは嘘です。大量摂取しても何も効果がないどころか、健康被害が起こる可能性まであります。
ただし、亜鉛が髪の毛に必須な成分であるのは事実なため、不足しないように摂取していく必要があります。
サプリメントなどで大量摂取する必要はなく、肉類や魚介類を含む食事をするだけで十分に必要量の亜鉛が確保できますので、注意しましょう。